34号 2012年(平成24年)12月20日

 

「御船手渡し場跡」

国史跡指定    その二

 

川尻の館に直冬を迎え入れた幸俊は、直ちに対立関係にあった阿蘇社に、所領寄進をちらつかせながら尊氏・直義の息災と直冬の目的成就の願を立てます。

その願文でも幸俊は肥後守を称しています。これは勿論直冬から授けられたものです。もっとも直冬は「幕府の命を受けて下向してきた」と言いふらし、近隣の武士たちを味方にするため、手形を乱発しています。河尻氏と連合関係にあった詫摩宗直も筑後守護職に補せられていました。

この一年半前、亡き後醍醐天皇の分身として懐良(かねよし)親王が肥後に入り、征西府が菊池に誕生しています。幸俊の一連の動きはライバル菊池氏への対抗意識があったのでしょう。それ故北朝方にも、南朝方にも付いていない武士を集結して九州での第三勢力を目論んでいたのです。

幸俊の思惑通り、中央の貴種直冬の名声と幸俊の交易による資金で大勢力に成長の兆しが見え始めた頃、筑前に根を張る少弐頼尚(しょうによりひさ)の迎えを受けて直冬は川尻の地を去ります。頼尚は直冬の父直義派の武将だったのです。更に頼尚は直冬を娘婿にして勢力の拡大を図ったのです。幸俊等も直冬側に加わり、直冬方は九州を制圧したかのような勢いになっていきました。

観応二(一三五一)年二月、中央では尊氏と直義が和睦すると直冬は九州探題に任命され、公的に九州の統括として大宰府を掌握しました。だが立場を失った前九州探題一色範氏は南朝方に走り、新たな対立が生まれるのです。

翌年二月都で直義が毒殺されると事態は急変し、直冬の勢威は一気に衰え、一色軍に追われ中国へと去ります。

一方、少弐勢は南朝方の菊池を攻めるが肥後国で菊池武光に破れ、筑前へと逃げ帰ります。河尻幸利はその時剃髪して菊池氏に帰順しました。

延文四(一三五九)年八月、筑後川の戦(福岡県小郡市)は小弐頼尚と菊池武光の雌雄を決する戦いで、頼尚は敗退します。しかし、勝った側の征西将軍宮懐良親王も重傷を負い、菊池武光が追撃を断念した程の接戦でした。

この戦で南朝方は最盛期を迎えるのでしたが、菊池に帰順している河尻幸利は、そんな菊池武光におもねることもなく、曖昧模糊とした態度を保ち続け川尻周辺の地を護っていました。

老いた幸俊は潮が満ちてくると館(城)近くの川港(現在の御船手渡し場跡)に佇み、都方面の交易から還ってくる家臣たちから、初代将軍尊氏・二代将軍義詮(よしあきら)親子と足利直義の猶子(兄尊氏からの貰い子)直冬との骨肉相食む壮絶な戦い、世に言う「「観応の擾乱(じょうらん)」の噂話に一喜一憂する毎日でした。

西 輝喜

 

2009年(平成21年)4月20日
~船の魅力その二~
幕府の大船への怖れは的中しました。関ヶ原の戦いから二百五十三年後の嘉永六年(一八五三)六月、ペリー提督に率いられたアメリカ東洋艦隊の黒い大船四隻が突如江戸湾に進入してきたのです。途方もない大きい黒船の到来に国中は騒然となり、幕府はその弱さを世間に露呈し、幕府崩壊への第一歩となりました。 この頃、志ある人々は「尊王攘夷だ、佐幕開港だ、公武合体だ」と国の行く末を論じ、さらにその主張を行動に移すなど国内は騒然たる雰囲気に包まれて行きました。 さて、土佐高知藩の郷士坂本竜馬は十八歳の嘉永六年(一八五三)、江戸に出て千葉道場で剣術の修行に励み、仲間と時節について研鑽を積んだ後、土佐に帰国して土佐勤王党に参加しました。翌年脱藩して再び江戸に出た坂本竜馬は赤坂の勝海州邸を訪ねます。血気に逸る竜馬は、成り行きでは勝を斬る覚悟でした。
その年、文久二年(一八六二)に幕府の軍艦奉行となっていた勝安房守は、そんな竜馬を見ると、ゆったりした表情に時折微笑を浮かべながら二年前、遣米使節の随行艦として、オランダから購入した咸臨丸という蒸気軍艦に乗り組み、太平洋を横断した時の「感動、そして知った世界の広さと文化」を語り、日本人が今急いでなすべきことは航海術の習得であり、これが海軍力の強化となり、日本の国益につながると「国防と国益を兼ねた開港論」を諄諄と説いた。〝目から鱗が落ちる〟とはこのことだろう。「攘夷」を叫ぶ己の視野の狭さが恥ずかしく、竜馬はその場で勝安房守に入門を乞いました。

金太のつぶやき

私たちの暮らしの中で生命を吹き込まれ育まれてきた熊本の伝統工芸品。その伝統工芸品は、時代を超えて芸術性を増し、国境を越えて人々の心に優しさと安らぎを与えています。また、日本の四季が、「創造」と「感性」の豊かさを育み熊本の工芸品に彩りを持たせてきました。海路交通が盛んな時代、海の玄関口であった肥後(熊本)の川尻は、必然的に工芸が生まれる土地柄にあり、その伝統を今日まで継承している町です。川尻のまちづくりの観光スポット「くまもと工芸会館」では伝統工芸普及のために工芸逸品の展示販売と各種工芸教室を開催しています。皆様方の新鮮で創造豊かな感性を「くまもと工芸会館」でぜひ創作してください。